出会いはほんの些細な出来事だった
Boy meets a girl.
Girl meets a boy.
部活中
外は天気も良くて、微かに吹く風が心地よい
バスケットは屋内でのスポーツだから、体育館の中で風を感じることはほぼ皆無だ
だから運動をした後に外に出ると
ふわりと吹く風が汗をかいている身体を包み、とても気持ちが良い
丁度後輩たちとの試合を終えた俺は休憩をするべく外の水道に向かった
スタメンである俺たちがまだまだ未熟な後輩と試合をするとなると明らかに差が出る
現に1年たちはへとへとになって息を弾ませていて、逆に俺たちは丁度良いくらいに汗をかいているだけ
「1年もなかなか良くなってきたな」
「花形」
顔をあげると、眼鏡をかけた友人がタオルで汗をふきながら隣に立っていた
その顔つきは、後輩の成長を喜ばしく思っているようで
俺は「まだまだこれからだぞ」と笑った
蛇口を捻り、流れる水をすくって顔を洗う
冷たさとサッパリとした感覚が好きだ
首に下げていたタオルで顔を拭き、片手は蛇口を捻って水を止める
上半身を起こし、閉じていた目を開いた
太陽の光が少しだけ眩しかった
「ん…?」
ふと、隣の水道を見ると、コンクリートの縁に視線を奪われる
タオルと、その上に置かれているのは
三角錐の形で立っているバドミントンの羽根とケータイ電話
「バド部の忘れモンか…?」
そう呟きながら俺は持ち主のわからないケータイを手に取ろうとした
しかし、触れる直前、その手を引っ込める
こういうものを他人に触られるのはあまり嬉しいことじゃないな、そう思ったからやめておいた
ケータイについているいくつかのキーホルダーやストラップを見て大方女物だ
だったら尚更、触らない方がいいだろう
「そろそろ、休憩終わりだな」
もう少し風に当たっていたいような気もしたが、すぐに思いを改める
そんなことじゃ、全国制覇など出来ないぞ。練習あっての結果だ、と自分に言い聞かせる
「よし」
首にかけていたタオルの端を掴み、グッと力を入れて引く
そして体育館に向かおうとしたときだった
「あ、あったあった〜」
背後からそんな声が聞こえてきて、思わず後ろを振り返る
視界に入ったのは一人の女だった
そいつは「あーもー探したわ」と水道の縁に両手をかけて大きくため息をついた
どうやらあの忘れ物の持ち主らしい
ケータイを手にとってポケットにしまう
タオルと羽を手に持ち、顔を起こす様子を理由も無く眺めていると、不意に目が合ってしまった
「…」
微妙な気まずい空気なり、オレはさっさと体育館に戻ればよかったと後悔した
そいつも少し困った顔をしていたので、オレはすぐに視線をそらした
「…こんにちは…」
その声に、オレは再び視線を戻した
そいつは苦笑いを浮かべて、すぐにバツの悪そうな顔を見せる
「あぁ…」
なんと返せばいいのかわからず、とりあえず小さな反応を返すと
その女は再び苦笑して俺に軽く頭を下げてその場を離れていった
駆けて行くその後姿は、頭の真後ろで束ねられたそれほど長くは無い髪が弾むように跳ねていて
どことなく印象に残った
「変な奴」
誰もいないところで一人呟き、俺は体育館に戻った
部活中だった
天気がいいから外で練習しようということになり私はラケットを持って外に出た
外でも中でも出来るバドミントンが好き
今日は天気がいいから、さらに気持ちよく練習できるだろうと思った
外履に変えて、立ち上がったとき何となく違和感を覚えた
「あれ、」
「どうしたの?」
既に外でラケットを構えているが首を傾けてこっちを見ている
「ん、シャトルと…ケータイが無い」
「は?どっかに置いてきたの?」
シャトルは私持ってるけど、ケータイは早く探した方がいいんじゃない、と言われ
私は頷いた
「さっき水道のところに持ってったとき、置いてきたのかも。とってくる」
ラケットをに預け
先にやってて、と言い残して私は走り出した
幸いなことに外の水道は土足でも行くことができる
なので外履のまま、私は走っていった
「あ、あったあった〜」
見慣れたタオルとケータイが視界に入り、スピードを落として歩み寄る
先ほど置いたままの状態で見つかったので、ほっとした
コンクリートの縁に両手をかけ、「あーもー探したわ」と呟きながら大きく息をついた
ケータイを握りしめ、ハーフパンツのポケットにしまい
シャトルとタオルを手に持って顔をあげた
すると、ふと近くにいた人と目が合った
けれどすぐに視線をそらされ、私は見られていたのかなと少しだけ恥ずかしく思った
さっさと立ち去ればよかったのに、何故か挨拶をしてしまった
「…こんにちは…」
そう言うと、また目が合った
少し驚いているような不審に思っているような様子だったので
何だか恥ずかしくなって言わなきゃいかったと後悔した
「あぁ…」
微かだけど男の人の綺麗な声に、私はその人を見た
居心地の悪そうな様子に申し訳なく思い、早く立ち去ろうと思った
何も言わずに行ってしまうのも失礼なのかな、と思い
軽く頭を下げて私はその場を後にした
待っている友人のもとに向かって走っていく
「綺麗な人だったなぁ」
男の人だよね?と考えてしまうほど整った顔立ちの人だったな
何となく、上級生かなとか何部なのかなとか、少しだけ興味が沸いた
「同じ学校なんだし、またどっかで会うかも」
小さく呟いて練習に戻るとすでに皆ペアで打ち合いをしてて、が恐い顔でこっちを見ていた
これが一番最初の、出会いだった