理由もわからずに

一体自分は何をしてるのか、何をしたいのか





Is that a mere whim?






「あー…」

頬杖をついて、空を眺める
今日は何だかやる気がしない(サボろーかな)

「…はぁ」

何でため息しか出てこないんだろう、そんな事を思いつつ
ゆっくりと目を閉じる

そして、昨日のことを思い出す



いつものように授業が終わって、俺は部活に行った
いつも通り練習して、汗をかいて、真剣にバスケをしていた

そして休憩をとったとき、俺は外の水道に向かったんだ
汗をかいて火照った顔を冷やしたくて

すると、そこには後輩が居た
Tシャツにハーフパンツ、髪を後ろで結っていてバドミントンのラケットを持った2つ下の後輩だ
俺はいつものように話しかけた

「よぉ、ちゃんと練習してるか」
「してますよ。先輩も、…すごい汗ですね」

苦笑しながら後輩はそう言った
俺は「まーな」、と言って水で顔を洗った

「今日もミルキーありがとうございます」

キュッと蛇口をしめ、タオルで顔を拭いているとそう言われた
ひょんなことから、俺はその後輩にほぼ毎日アメをあげていたので、その礼を告げられたんだ

「あぁ、今日はペコちゃん10個あったか?」
「8個でした」
「そりゃ残念」

放課後の部活で、俺はこの後輩とよくここで会う
バスケ部とバドミントン部の休憩のタイミングが、どうやら同じらしい

会う度に礼を言われ、少しだけ他愛ない会話をする
いつもそうだ
そして、お互い休憩時間が終わり部活の練習に戻っていく


「よし、そろそろ休憩終わりだな」
「あ、私もだ」

ケータイで時間を確認し、すぐにそれをポケットにしまう
水道のコンクリートで出来たふちに置いていたタオルとバドミントンの羽を持ち
「それじゃぁ」と言って軽く頭を下げて部のほうに戻っていくんだ

けれど、その日は違った

タオルと羽を持って、戻っていくのかと思ったら
なかなか動き出さない
「あー…」とか何とか言って、何かを躊躇っていた

不思議に思った俺は、「どうした?」と尋ねた
するとその後輩は、少々遠慮しながらもおずおずを口を開いた

「あの、ですね…藤真先輩聞きたいことがあって…」
「?何だよ」

「何で、毎日お菓子くれるんですか…?」

「…は?」

意味がわからず、俺は素っ頓狂な声で聞き返した
その後輩は気まずそうに、後悔したような顔をした

「何だよ、急に…」
「いや、何でわざわざ4階まで〜…とか、思って…」

だんだんと尻すぼみになっていく言葉
その顔は少しずつ赤くなっていった

「…」
「…」
「あ、のッ…やっぱりイイです!今の忘れてくださいッ」

大きな声でそう言うと、いつもより大げさに一例をして
その後輩は走り去っていった


これが、昨日の放課後の出来事
これが、ため息の原因(多分)

「何でって…今更じゃねー?」

そう呟くけれど、今でもあの質問には答えられないな
俺自身、“後輩にお菓子を与える”理由がわからないんだから

「大体、なんであの日ミルキーやったんだっけ…」

100円を借りた、次の日

確か最初は普通に100円を返しに行ったんだ
銀色の硬貨を握って廊下に出ると、同じ学年の女が側に寄ってきてミルキーを俺に渡した
俺はとくに何も言わず、それを貰った
そのときは、後で自分で食おうと思ってたんだけど、

アイツの困った顔を見たら気が変わったんだ
苦手そーな、実は迷惑そーな様子の後輩を見たら急に面白くなって
少しだけからかってやろうと思った

だから右手に返す予定の100円玉、左手に貰ったばかりのミルキーを握って選ばせたんだっけ

「…アイツ、見事にミルキー当てたしな」

あのときの呆然とした表情は正直面白いと思った
だから、当分からかってやろうとか思ったんだよな

まるで、子供がおもちゃを見つけたような気分だった



「藤真、」
「ん、ぁ?」

不意に声をかけられ、俺は顔をあげた
随分と高いところに花形の顔が見えた

「ぼーっとしてるな」
「…」
「考え事か?」
「まぁ、そんなとこだな」

考えても、考えても、答えは見つからないけど…

「今日は、行かないのか?例の1年生のところに」
「…」

その言葉だけが、やけに強調されたように耳に届く
俺は眉間にしわを寄せた

そして

「今日は、行かねぇ」

アイツと出会ってから初めて
大して忙しくも無い暇な昼休みの間、教室から1歩も出なかった