日に日に増すこの想いを

いつになったら伝えられるのだろう






Between Feeling love and Keeping cool.






「藤真」「ん?」

前半の練習を終えて、花形が声をかけてきた
程よくかいた汗をユニホームのすそで拭うと、タオルを渡される

「最近調子がいいな」
「…まーな」

自分でも気づいていた
好調の理由に

案外俺も普通の高校生なんだ、と可笑しく思う


っ」
「あ、藤真先輩こんにちはー」

声をかければ、にこにこと笑って挨拶を返してくれる後輩
部活の休憩の度に、俺はこの水道の側で彼女に声をかける

好きな奴が目の前に居たら、何かしら接点を持ちたいと思うのは普通だろ?

「バスケ部気合入ってますね」
「まーな。そっちは?」
「バドもバスケ部程ではないですけど結構頑張ってますよ。皆練習始まるとすごい集中力だし」
「そーか」

他愛ない会話がこんなにも幸せに感じるなんて、単純だと思う

先輩と後輩、3年と1年、バスケ部とバドミントン部
どこをどうとってもあまり接点を持たない俺達
この距離は好きだけれど、やっぱりもどかしくも感じる


会えなければ、会いたいと

会えば、笑顔が見たいと

笑顔を見れば、触れたいと


自然とそういう風に思うのは、それだけ彼女のことが好きだからだろうな

最初は肯定も否定も出来ずに居た曖昧な感情だったけど、一度肯定してしまえば後は早い
時間が経つ程想いは募る一方だ

「頑張ってくださいね!応援してますから」
「あぁ」

その言葉が、どれ程嬉しいものか…お前はわかっていないんだろうな
何だか切ないけれど、それでも好意による言葉が嬉しくて顔を緩ませる

「お前も怪我しないで頑張れよ」
「はい!それじゃぁ」
「おぅ」


小走りで練習に戻っていく後姿を見る度に思う


“この想いを伝えてしまえれば…”


けれど、それはまだ早い

悲しいことに、彼女は俺をそういう対象には見ていない
ここで突っ走って想いを伝えれば、彼女は間違いなく動揺するだろう
そしてとにかく悩んで、きっと混乱させてしまう

彼女を困らせたいわけじゃない、だから言わない
焦るモンじゃないんだ

意外と我慢強いというか、自分の理性の強いところに笑うしか無い
いや、寧ろ臆病なのかもしれないな

「これだけ好きだと、フラれたら立ち直れないな」

好きだから、好きになって欲しい
単純で簡単でシンプルなのに、何故か難しいこと

「…練習、始めるか」

最高に、気分が良い






体育館に戻ると、すぐ近くに立っていた花形が俺に気づき声をかけてきた

「随分と機嫌がいいな」

さっきの「最近調子がいいな」といい、今の言葉といい
そんなに俺ってわかり易い奴なのか、と内心思う

「目敏いよ、お前」

少し嫌ーな顔を見せると、また苦笑
「バスケ以外に関しては、顔に出やすいんだよ」と返された


顔に出やすい、か


ならが俺の気持ちに気づいても可笑しくないんだけど…
大方それには無理があるんだろうな

「鈍そうだもんな」

頬が緩む
あいつのことを考えただけで、何だか温かい気持ちになった
花形が一瞬驚いたような顔をしたが、すぐ小さく笑った

「藤真にそんな顔をさせるなんて、その1年生はすごいな」
「…笑ってんなよ」

何だか照れくさくて、少し腹が立つ
口元を片手で抑えながら、花形は口を開いた

「で、想いは伝えないのか?」
「あぁ、まだ…もう少しこのままでもいいだろ」
「…」
「ほら、練習始めるぞ!」
「あ、あぁ…」


想いを伝えるのは、もう少し先でいい
時間をかけたって、何も問題は無いはずだから


「そんなにのん気なことを言ってて、いいのか…?藤真」


そんな花形の呟きは、俺には届かなかった