「アツーい…」
今朝の天気予報では、本日の最高気温は32℃
真っ青な空に大きな入道雲が流れる真夏の炎天下
ジャージ姿、真夏の青春
「もー無理!死ぬ!溶ける俺!」
暑さも限界に達し藤真は持っていたホースを地面に叩きつけた。そしてその場にしゃがみ込み、「あ゛ー…」と唸る。は呆れながら、少し大きな声を出した。
「ちょっと藤真、サボんないでよ!」
「ウルセー…暑いんじゃー」
数メートル離れたところで先ほどの藤真のように片手にホースを持ちタオルを頭に乗せて水撒きをするも、暑さのせいか、機嫌があまり良くなかった。
「ちょっと、水勿体無いし!ちゃんとやってよもう」
少々イラつき気味にがそう言うと、藤真は頭だけを起こし、その端正な顔を歪ませた。
「ウッセーよ。つーか、お前なんでそんな暑苦しい格好してんだ!?死ぬぞそれ」
「これくらいじゃ死にませんっ」
余計なことを煩く言われ、声を荒げて否定する。その格好というと、頭にはタオルを被っていて、上下冬季のジャージ姿。上着の袖は撒くってはいるものの、この気候この時期に似つかわしくない格好であることは確かだった。
「見てるコッチが暑いんだよー…やめろよなーそういうのー」
呆れているのかだらけているのか、両方を足したような口調でさらに藤真小言を口にする。そんな彼の格好は、頭にはタオルをバンダナ縛りで被り、上は袖を捲くったTシャツ、下は部活のユニフォームのような、ハーフパンツ。
「アツイなー…クソッなんでこんな水巻きなんかやらなきゃいけねーんだよー」
「…」
も口には出さないが藤真と同じことを思っているらしく、大きなため息をついた。手で額の汗を拭うと、ぼんやりと夏休み前のことを思い出す。
2人がこんな状況になったそもそもの原因は1週間前のこと。その日は終業式で、今日のようにとても暑い日だった。
全校生徒が暑さを我慢しつつも1学期最後の日ということで体育館に並んでいた。しかしそこには藤真との姿は無かった。
2人は暑いからイヤだという理由で終業式をサボッたのだ
もちろんそのような生徒はこの2人だけではなかったのだが、 運悪く担任に見つかってしまい、罰ということでこの水撒きをさせられることになった。
7月いっぱい、毎日学校に来て。
「せめてもっと涼しい時間でいいじゃん…なんで昼なの…」
ホースを持つ度に同じような不満を持つが下を向いて項垂れる。額を伝って地面に一滴の汗がぽたりと落ちた。
「あーもーやめたヤメタ!」
首をひねって藤真の方を見ると地べたに大の字になって寝そべっている
「ちょ、藤真…泥だらけになるよ〜?」
「いいんだよもー」
「いいって…」
呆れて肩を落とすだが寝そべる彼の様子はすごく心地よさそうだ。真上から太陽が照っているにも関わらず、藤真の顔は笑っている 。その笑顔は、太陽以上に、なんだか眩しい。
「あー…きもちー」
「…」
藤真の背中の下には水溜り。真っ白だったTシャツは泥水を吸ってしまっていたが、当の本人は水が気持ちよくて汚れなど気にしていない。幸せそうな顔をしている。
は、ふとあることを思いつく。そして口の両端を吊り上げて、ホースを握っている手に力をこめた。
「食らえっ!!」
「ゥワッ!?」
勢いよくの持つホースから水が放射され、寝ている藤真に直撃する。驚いた彼は両腕で防ごうとするがそれは無意味だった。
「アハハ!気持ちーぃ?」
「っ…ンやろッ…!」
笑っているを睨み、藤真は咄嗟に先ほど手放したホースを掴んだ。そしてそれを彼女に向ける。
「きゃッ!ちょ、何すんのよーッ!?」
「うるせぇ!お返しだ!!」
藤真のホースの口から水が飛ぶようにに向かって放たれる。しかも勢いをつけるべくホースの口の中心を潰しいる。
「藤真ーーーッ!」
「ケケケ、こんなクソ暑い日にんな暑苦しい格好してるからだよ」
まるで小さな子供のように藤真は無邪気に笑う。そしてもいつまでも負けている彼女ではなく、互角に対抗する。
「結構気持ちーだろ、水浴びってオイ!?」
「アハハ!水も滴るいい男かもよー?」
「バッ、顔面ヤメロ!目が開かねぇ!!」
そして気づけば、両者共水浴びに夢中になっていた
太陽の位置がどれくらい移動しただろうか。ホースは地面に投げ出され絶えず水が流れ出ていて、2本の小さな川が出来ている。
藤真もも全身ずぶ濡れ、そしで泥まみれになって寝転がっていた。
「あー…もーこの後部活どうすっかなぁ」
「っていうかまたバレたらお終いだよね」
「行っておくけど共犯だからな」
「えー…もともとは藤真が手ぇ抜いたんじゃん」
「先に水かけてきたのはお前だろー」
「…そうだっけ?」
ぼーっと空を眺めていると、ふと両者同時に互いを見る。そして一瞬の沈黙の後、2人は笑った。
「明日も、水巻きかぁー…」
「明日は着替え持って来よ」
「あ、それいいね。ついでにアイスとか」
「さんせー」
笑いながら2人は上半身を起こす。そして再びまぶしい空を仰いだ。真夏の太陽に、二人とも目を細めた。
「明日もよろしくな、」
「んー!」
真夏の、2人きりの青春は当分続く
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