ドラマみたいな恋なんて、あるのだろうか。
自分の恋愛に関しては「そんな夢みたいに都合のいいことは起こらない」と思う私だけど…
どうやら、あの子のラブストーリーは誰もが羨む“ドラマチック”な展開になりそうだ
What a dramatic development it is !
「…最近、先輩とあんまり会わないなぁ」
ポツリとそうが呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
彼女は落ち込んだ様子でもなかったけれど、どこかつまらなさそうな、そんな表情だった。
「そういえば、あんまり見かけないよね」
「うん…忙しいのかも」
バスケ部だし、3年生だしね、と苦笑を浮かべるはやはり寂しそうだ。
ねぇ、そろそろ気づいてもいいんじゃないの?
その想いに、さ。
そう言ってしまっていいものか、それも私にはよく分からなかった。
これは、自身が気づかなきゃ意味が無い気がするんだ。
1年と3年、それこそ部活や委員会なんかで接点が無ければ特定の人と親しくなることなんてほとんどない。
けれど、と藤真先輩は仲がいい。
部活だって違うし、委員会でも接点はない2人だけど、偶然の出会いから2人はとても親しくなって、ただの先輩後輩と言い切れるかどうか…
以前、と藤真先輩に一度溝が生じて、その頃から薄々思っていたんだけど、
多分、お互いに片想いみたいなもんだ。
つまり、ほとんど両想いに近い。
以前はまだそこまで強く言い切ることは出来なかったけど、最近は結構確信がある。
だって、この子の様子からして、藤真先輩のことが好きなのは明らかなんだもの。
会わなければ寂しそう、会えば嬉しそう。
前からそんな感じだったけど、以前よりもその感情は表に出ていてとても分かりやすい。
ただの“いい先輩”に対して、さすがにここまでならないでしょう?
それに、藤真先輩だってそうだ。
最近はの言うとおりあまり見かけなくなったけど、以前はよく見かけた。
しかも、先輩がをよく見ていたことに、私は気づいていた。
が部活をやっているとき、彼女は藤真先輩のことに気づいていなくても、先輩はすぐにを見つけて、ちらりと様子を伺っていた。
ただの“いい後輩”に対して、の態度じゃないよ。
2人はきっと、絶対両想い
だけど、それをどうやって本人たちに気づかせる?
せめてどちらかが自分の想いを自覚して、行動に移せばいいのに
「…、?」
「え、あ、ごめん」
「大丈夫?」
「うんごめん、ちょっとボーッとしてたわ」
深く考えすぎて、が呼びかけてくれているのに気づかなかった。
慌てて謝罪をすると、一瞬不思議そうな顔をされたけど、私笑ってみせたらすぐに彼女も笑った。
「でね、」
が再び話の続きをしようとしていた時だった。
「ちゃん、」
不意に、クラスメートの子がに声をかけてきた。
は「なに?」と顔をあげてその子のことを見て、私もつられてその子を見上げる。
「3年生の先輩が、呼んでるだけど」
「えっ」
も私も、すぐに例の先輩を頭に思い浮かべた。
上ずった声を発したは少し慌てたように椅子から立ち上がる。
私は同様、廊下のドアのところに立っているその人物を見た。
本当の波乱は、ここからだ
が席を離れてから十数分
昼休みの時間はまだ余ってはいるけれど、私はポーカーフェイスのまま、ただ内心だけそわそわしながら自分の席で頬杖をついていた。
さっきを呼び出したのは、藤真先輩じゃなかった。
てっきりそうだと思ったのに…も、そう思った様子だった。
けど、実際は全く違う人で、男子バド部の部長だった
その部長はを呼び出して、そのまま彼女を連れ出した。2人が教室から離れていくとき、一瞬は私の方を向いて困ったような顔を見せた。
私は少々心配ながらも、こくりと小さく頷いた。
「あの人、のこと…」
あれからずっと部長のことを考えてみた。を呼び出すようなこと、一つしか思い浮かばない。
「告白、だよねー…」
いくら同じバド部だって、さすがに男子の部長が女子の部員に用があるとも思えない。そもそもあの雰囲気は、そういうものだと思う。
「どうするんだろう」
は、多分藤真先輩が好き。だから他の人に告白をされて、好きでもないのにOKなんてしないだろう。
でも、どうなるのかなんて今私に分かることじゃない。
「大丈夫かな、…」
トイレの鏡で髪をいじりながら、私は小さく呟いた。
ふぅ、と小さくため息をついてトイレを後にし、教室に戻ろうとドアの前まで来たときだった。
驚きのあまり一瞬思考が止まった。
そして、何よりも最初にこう思った。
やっぱり、彼らの恋はドラマチックだ、と。