私を呼び出したのは、藤真先輩ではなく、男子バド部の部長だった。
廊下へと私を呼び出した部長は少し困ったように笑って、場所を変えようと言ってくる。

私は一瞬ためらったが、仕方なく小さく頷いく。
教室を離れるとき、一瞬だけの方を振り返ると、彼女は心配そうに私を見て、そして彼女もまた、静かにこくりと頷いた






I noticed my heart.






体育館前の水道

そういえば、藤真先輩と最初に出会った場所はここだったなぁ、と水道のコンクリートに寄りかかりながらぼんやりと思い出した。

部長からの呼び出しは、まさかとは思ったが、そのまさかの…告白だった。
生まれて初めて告白というものをされたんだな、と、どこか他人事のように思えた。

「……断っちゃっ、た…な」

そう、私は部長の告白を、お断りした

『俺…さんが好きなんだ』
『付き合ってくれないかな』

真面目で、親切で、ちょっとカッコよくて、ちょっと面白い人で、きっと文句無しの人だったんだと、思う。
けれど好きだ、と、付き合ってほしい、と言われたとき、喜ぶとか恥ずかしがるとか、そんなものは全く無くて、申し訳ない気持ちになった。
それは、部長の告白にOKと言うつもりは全く無い、ということだ。

「断ったりして…寧ろ嫌われちゃったかな…。でも、そんな人じゃないよね」

お断りするって、こんなに後味が悪いものなんだな…と思った。
けれど、人の好意を受け取れないと言うんだから、後味が悪くても仕方が無い。
自分の気持ちに嘘をつくことは出来ない。

そう、嘘は、つけない



去り際に、部長から一つだけ聞いてもいいかな、と尋ねられた


さん、好きな人がいるのかな』

『えっ……』



「はぁ…」

ずるずると沈むように、私はしゃがみ込んで膝を抱え、それに頭を突っ伏してしまう。
“好きな人”と言われて、頭が混乱して、一瞬全てを忘れて頭の中が真っ白にった。

そしてすぐに___不思議と、思い浮かんだ、人


「私…藤真先輩のこと…」


好きなんだ、と気が付いた…やっと
私は、藤真先輩に恋してるんだ、と___

だから、藤真先輩に会えると、あんなに嬉しかったんだ
だから、藤真先輩に会えないと、こんなに寂しいんだ


全ては、 恋 だったんだ


偶然の出会いから始まって、他愛ないやりとりをして、とても素敵な先輩だと思った
けど、それだけじゃなかったんだ

貰ったミルキーはとても甘くて美味しかった。他のお菓子もそう。
マフィンは本当に真剣に作った。渡すときに緊張したけれど、受け取って貰えて嬉しかった。



___コレ、ありがとな___



その、たった一言が嬉しくって、心が躍った
作ってよかった…と、また作ってみようかな…と、そう思って幸せな気分になった

「ふじま、…先輩…ッ」

じわりと涙が溢れて、視界が歪む。
私は我慢出来なくなって、膝を抱えて泣いた。
胸が苦しくなって、息をするのが、辛い。

もしかしたら、好きだって言ってくれた部長も、こんな気持ちだったのかもしれない。
好きで、好きで、どうしようも無い、気持ち
どうしようも無く、好きだという、想い

いつだったか、に尋ねられた、あの一言

『先輩のこと、好きなの?』
『それは、先輩として?』

あのときの私は分からない、と答えた
けれど、今なら分かる____今ならハッキリと、言える気がした

「藤真、先輩…っ」



あなたが、好きです