布団の中にいるときからずっと






Painkiller






休日だった
毎日学校に行く(当たり前かな?)私にとっては唯一たっぷり寝れる日で
なのに今日は全然寝れない
というか、ダルくて朝5時に目が覚めた

それからもう4時間近く、唸り声をあげて布団の中


「あたまいた〜…ぃ」

   ズキン ズキン
ズキン ズキン
  ズキン ズキン

頭痛です

ふと、階段を誰から上ってくる音が聞こえた
きっとお母さんだ

ガチャ、とドアが開い母は顔を出す

「まだ寝とんの〜?」

お母さんもう出かけるで、と言う母はもう化粧バッチリで
言わなくても見れば解る

「んー…あたま、イタイわ…」

もぞもぞと布団の奥に引っ込む
母の声すら、自分で声を発するのも、頭に響く

「あら、どないしたん?風邪ー?」

「ちゃうて、ただの頭痛ー…」

頼むから声ちっさくして、と懇願する気力も無く、
うー…と唸るしか出来ない

「ほんなら、今日は大人しく寝てんで?」
「ん…」
「どーしてもツラかったら、電話しぃ?」
「ん…」

そういい残し、母はそぉーっとドアを閉めて出かけていった


誰もいなくなった家
隣のオバチャンの声がする
外を車が通った


時計の、針の音しかしなくなった



 ズキン ズキン
  ズキン ズキン
ズキン ズキン

「どっか、悪いのやろか…」

ただの頭痛なのに
引きそうにない痛みに、気持ちが押され弱気になる

何だか泣きそうになった

「もう高校生なんやで…?」

我慢しぃや、と自身に言い聞かせる声すら
涙声になっていた



静かな部屋

静かな家

時々遠くでする音

味気ない時計の音



寂しい



そう思って、枕元に手を伸ばし
ケータイを掴む
リダイヤルのボタンを押す
すぐに“南 烈”の文字と11桁の数字が表示された

そのまま発信しようと指を動かすけど、やめる

機械音すら、嫌に感じた
耳元で音がするのを、今の状態で耐えられるわけがない

「ほんなら、メール…」

今度はメールのボタンを押す

でもすぐに手が止まった
打つのすら、ダルい

「つーか、私何て打つつもりなん…」

電話もメールもダメ
家には誰もいない

頭が痛い

でもそれ以上に今は

寂しい




それから
重いままの頭で、身体だけふわふわした感覚を覚えた

瞼が重い

あ、…私、寝てたのかな


「起きたか」
「!」

寝返りを打とうとした途端、背中の方から聞こえた声

、」
「つ、よし…」

ゆっくりそっちを向くと、見慣れたカオがそこにいた
急に心が暖かくなった気がした

「な、何でここにおるん…」

「お前のオバチャンがな、『頭痛薬下さいー』って店来てな。んでオレ店番してたんや。せやから、」

見舞いに来たで、と言って
烈は手を伸ばしてきた

それは、大きな手でごつい手で
私の頭の上にポン、と乗って撫でる

あったかい

嬉しい

泣きそう

「薬、持ってきたで。飲めるか?」
「ん…飲む」

すっと小さな箱を取り出し、開けて錠剤を取り出す
ゆっくりと起き上がった私の手に「2錠な」と薬を乗せる
そしてパキパキッと音を立ててペットボトルの水をくれた

「口移しで飲ましたろか?」

渡す際に、ニヤっと笑う

拒否の言葉を述べるより速く、
私は一気に薬を口に放り込んでごくごく水を飲んだ

「拒否かい」

とつまらなそうに残念そうに言う烈か面白くて
少しだけ笑った

再び布団にもぐりこみ、今度はしっかりと烈の方を向く

「お店、ええの?」

店番してたんやろ、ろ言うと烈はしれっとした顔で
「岸本に任せたわ」と言った

いつもやったらキッシーを哀れに思うのに、今日はそれ以上に感謝の気持ちでいっぱい
それを上回るのは、烈への感謝と愛しさ
…口には出さないけど

それから少し、他愛ないおしゃべりをした

南は床にあぐらをかいて座ってて、私は布団の中で
笑ったりふざけたりして過ごす

さっきまであんなに寂しかったのにな

1時間近くおしゃべりをして、私はだんだんと眠気に襲われる
うつらうつらしてたら、烈が眠いか?と聞いてきた

「眠くなる成分入ってないはずなんやけど」

と言って持ってきてくれた薬の箱を見る
さすが薬局の“南龍生堂”の跡取り

瞼が降りてくるのを我慢できなくなった私は、そのまま目を閉じて言った

「んーん。烈のカオみたら、ほっとして眠なったわ」

どんな反応するのか気になって、少し頑張ってうっすら目を開くと
面白い反応してて

「…驚きすぎやで」

て言ったら

「…お前が驚かしたんや」

と返してきたので、思わず笑ってしまった

烈の貴重な顔も見れたし、本格的に眠くなってきたので静かに目を閉じた

「いつもそんくらい素直にしぃ」
「んー…素直やて」

眠くて、返事も短くなる
烈の声は少しだけ嫌味っぽく

「嘘つきぃ、意地っ張りやんか」

と言う

烈に言われたないよ、と思ったけど言う前に私は眠りについてしまった


「……寝たんか?」
「…」
「……」

痛みを忘れた私は心地よい眠りの世界



「今日みたいに素直なのもエエけど、
やっぱいつもみたいに元気に意地張ってる方がエエな」



優しい声が聞こえたのは
優しく頬を撫でられた感覚は、ただの夢だったのだろうか


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