快い晴れの朝
いつも通り私は朝早く体育館に向かう



神様はきっとこう言う、“惚れた弱みだ”と。



朝だというのにやたら活気づいている体育館は、真冬でも熱気に溢れている
もしドアを締め切っていたら熱中症になるね、絶対
そんなことを思い、手に握ったストップウォッチを見る

「残り1分ー!」

そう叫ぶと、試合をやっている部員たちの動きが機敏になった
力強くと響くボールと床がぶつかり合う音
選手たちが走ってさらに揺れる床
たとえ練習だとしても、真剣に試合に取り組む彼等の周りには飛んだ汗が光る

聞こえは青春を感じるけど、実際は綺麗とはかけ離れたもの
けれどそんなものにももう慣れてしまった
今更汗が何だ、スポーツやってるんだから仕方ない!

…まぁ、洗濯物は多くてムカつくけど

1コ下のエース・清田が相手の間を縫うように走り、シュートを決める
ナイシューッ!という声が響く 離れたところで他の部員が得点票をめくった

試合が終わり、休憩したりシュート練したり各自行動がまばらになった頃
タオルを頭に被った清田が近くに寄ってきた

「マネージャー!どうスか俺のシュート率!」

元気の良い彼はよく“猿”とか言われてるけど、それもまた愛嬌

「イイ感じーでも疲れると雑になるね、もっとフォームを大切にした方がいいよ」
「うっわキビシー!!でも俺頑張るッス!!」

そう言いながら元気ボーイは私に簡単な礼を言い残し、水分を補給しに行った
時々生意気なときもあるけど、時々弟みたいな彼の背中がなんとなく可笑しかった
そんなことを思いながら再びノートに視線を落とす

「まるで成長記録よねぇ」

小猿・キヨの、と心の中で呟き、持っていたシャーペンをくるくると回す
多分、コレ私の癖ね

すると不意に背後から魔の手が音も無く忍び寄る

ベシッ!

「!?」

得意げに回していたシャーペンが斜め前方に吹っ飛んだ
一瞬にして、myシャーペンは無残にも床に落ちる 右に首を捻り、勢いよく顔をあげる
私の身長より遥かに高いところにある奴の顔が、嫌味なくらいに笑顔を浮かべていた

「神…っ!」
「よく飛ぶね」

ニッコリと微笑むこの男が憎くて堪らない
朝から、最悪だ

「アンタが手で叩いて飛ばしたんでしょ!」
「だってクルクル回ってたから」
「回ってれば手で弾くのか!」

思い切り睨んでも神は臆しもせず笑っている
それが、その笑いが、見た目は爽やかで、中身が真っ黒なのがムカつく…!
明らかに今のは私を小バカにしての行動だ

「もうッ、壊れるからやめてよね!」
「別に壊したくてやってるんじゃないよ」
「そう思って無くても壊れるからヤ・メ・テ」

そう言い放つと、神は一瞬きょとんとして そして再び笑顔になった

「早く拾いなよ、“マネージャー”」
「…」

なんで なんで私、 こんな人の彼女なんだろう
っていうか、 本当に彼女なんだろうか?

そう思わずにはいられない瞬間だった


-惚れたら負け-


悔しいけど、そんな貴方を好きになった時点で私の負けは決定した