薄暗い空の色

切ない音色を生み出す雨の雫
それでも、あなたと一緒なら



「雨だねー…」

窓ガラスに雫が降ってくるのを眺めながら私はぼやいた
今日は雨、お天気予報もずばり的中

「折角出かけようと思ったのにね」

後ろを振り向いて“ね”、と話しかけてもその男はソファーで舟をこいている
全く…実は出かける気なんか無かったんじゃないですか…?

「楓、」

側によって、名前を呼べばゆっくりと目を開く
眠たそうな瞳、それでも必死に私に応えようとしてくれるのは嬉しい

「雨だよ」
「しってる」

短い返事、もともとそういう男なんだけどね
楓は…あんまり、楽しみにしてなかったのかな
本当なら、今日は2人で映画に行く予定だった
久々にバスケ部が休みだと聞いて、じゃあ2人で出かけようと話を持ちかけたには私
彼は静かに頷いてくれた
本当は…映画なんて、どうでもいいの
ただ、2人で出かけられるだけで嬉しかったから…すごく楽しみにしてたのに

「雨だなんて…」

お天気というものは、難しいね

「…」
「そんなに、眠いのー?」
と言いながら、彼の隣に腰を下ろす
反応は、返ってこない

「…4月なのに、寒いねー…」

春だというのに、肌寒い
雨のせいなんだろうか、それともまだ完全には春になっていないのか

「楓ー」
「…」
「かえでー…」
「…」
「…寝ないでよ」
「…」
「…つまんな、ぅわっ!?」

つまんないじゃない、そう言おうとしたけれど思いががけぬ出来事に言葉は消えてしまう
強い力で身体を引き寄せられて、引き寄せた相手の方に倒れこむ

「ちょ、楓ー…」
「うるせー」
「…」

肩に腕を回され、彼に倒れこむような状態
身動きがとれなくて、私は眉間にしわを寄せる

「ねー、何なのー?」
「…」
「眠いんじゃないのー?」

不機嫌になった私は、別に彼は悪くないのにきつめの口調で当たる
可愛くない彼女だなぁ、とどこかで自分自身に呆れる

「…」
「…いい」
「え?」

不意こぼれた楓の一言に私は彼の横顔を見上げる
ゆっくりと目を開けて、首を動かす 視線が交わる

「雨でも、いい」

低く、ぶっきらぼうな言葉だけど、 それでもどこか優しい声色だと知っているのは私だけだったらいいのに

「…折角、デートの予定だったのに」

楽しみにしていた、本当に だからそれだけ、ショックなんだ
楓は表情を変えずに、言葉を続ける

「…一緒にいられれば、それでいい」
「…え?」

今、…何て…

「一緒にいられれば、いい」
「楓…」
「おめーは違うのか」
「…」

嬉しくて、泣きそうになって、必死に声を絞り出して、私も…と答えれば、一瞬
本当に一瞬だけど、彼の目元がふっと緩む
そして私の頭の上に、コツンと、彼の頭が乗る
寄り添えば、伝わる互いの温度
バカだな、私
一緒にいられるだけで、幸せなのにね
楓がそう思ってくれてるんだもんね
私には、最高の彼氏がいるね

晴れでも、曇りでも、雨でもいい 台風だって、大雪だって 貴方が隣にいるならばそれだけで十分なんだ

「…ねみ」
「ふふ、…じゃぁ寝よっか」
「ん」

4月だというのに肌寒い春ですが、身も心も温かいです


-卯の花曇-


4月の休日、貴方がいれば雨の日も悪くはない。