その日は一段と日差しの強い日だった
Orange
いつものように少し本を読んで航路を確認して、ある程度やることを済ました上で
ミカン畑に向かうナミ
「うぅ〜…あっついわねぇ」
手でパタパタと扇いでも、全く暑さは引かない
こんな気候だと大事なミカンの世話をするのもひと苦労だ
しかし手を抜くのも嫌だ、と彼女は我慢をしてオレンジ色の果実に手を伸ばす
ナミの髪もミカンと同じ色
いつもは麦わら帽子に隠れていて毛先しか見えないが
今日は脳天からよく見える
つまり、帽子を被っていなかった
この強い日差しの中、ナミはわざと帽子を被らないようなバカではない
「ったくルフィの奴、なんてことしてくれるのよッ…」
原因は、船長だった
ナミの麦わら帽子を、ルフィが破いてしまったのだ
故意的にやったのではなく、たまたま、運悪く
それが小さな穴であったらそのまま被っても大して問題はなかったのだが
頭の真上がぱっくりと割れてしまったのだ
いくら暑いからといってそんな帽子を被るわけもなく、
そもそもあれだけ盛大に破れてしまえば被っていないのと変わらないから
握りこぶしで怒鳴りつけたものの、元通りになることは無理だと、
次にどこかに寄ったときにルフィのこづかいから買うと言って諦めたのだった
じりじりと太陽の光が彼女を照らす
夏気候でなくとも、こう日差しが強いと厳しいものだ
「…短時間で済まさないとね」
20分はやっただろうか
かごの中には鮮やかなオレンジ色の果実がごろごろと転がっている
「ふぅ〜…ひとまず傷みそうなのは収穫完了ね」
あとは水巻きだわ、とナミはホースの側まで歩いていった
「あ、…ルフィにやらせようかしら」
ホースを握って彼女は呟く
しかし、その考えは直にやめた
大事なミカンは、自分でしっかり管理したいと思ったのだ
「…アイツにやらせると、船中が水浸しになりそうだし」
そう苦笑しながら、水道へ向かう
「ナミちゃーん」
少女の声がした
「?」
後ろを振り返ると、誰もいない
すると再び呼びかけられる
「コッチー、上みてー」
「上…?」
言われるがままに、ナミは顔をあげた
眩しさに目を細めると、見張り台に少女の姿を見つける
「ナミちゃんにプレゼントいっきまーす!しっかりキャッチしてね?」
そういってはにっこり微笑み、
何かを持った腕をすっと突き出して手を離した
「!?」
風に乗ってひらりひらりと降りてくる
何だかよくわからないが、とりあえずそれを掴むためナミは水道から離れた
そして両手を高くあげ、それを捕まえる
「帽子…」
「ナイスキャッチ!」
イエーイ、とは拍手を笑いながら零す
ナミはそんな少女を一度見上げ、再び手元に視線を戻した
それは麦わら帽子
そう、昨日ルフィが破いてしまったナミの麦わら帽子だった
「…」
「じゃ、アタシ眠いから昼寝するね」
水巻き頑張ってねナミちゃん、と言っては見張り台へと頭を引っ込めた
慌ててナミがありがとう、と叫ぶとすぐに顔を見せ嬉しそうに微笑み、ゆっくりと再び見えなくなった
ナミは帽子を見つめる
昨日破れてしまったところは縫い直されていた
そっと指で触れるとザラザラとした小さな凹凸を感じる
直らないと思っていた
別にルフィのように思い入れもなかったから、諦めるのも容易いことだった
けれど、仲間がそれを直してくれた
“また被れるように”、と
「装飾までついてるのね…」
昨日までは無かったオレンジ色と黄色の小さな花が数個
手作りだろうか?
彼女は器用だから
器用で、優しい子だから
ナミは受け取った麦わら帽子を被った
そして軽い足取りで再び水道へと向かう
「さぁて、水巻き頑張るわよー」
鮮やかな彩りの果実と彼女の髪と麦わら帽子の花の色は同じ色
そのORANGEは太陽の光を浴びて輝いていた
<<