彼女はただページを捲る手と、難しい文字を追う目だけを動かすだけ






Quiet afternoon






静かな午後だった


食後のひと時、
サンジはキッチンで洗い物をしていてはそれを手伝いに行った
ルフィとウソップとチョッパーはさっきまで騒いでいたが、今は甲板の上に寝転がり昼寝をしている
ゾロは、恐らく船尾でトレーニング中
ナミは何やら船の今後の航路がどうとか言ってたから、多分自室に篭っている

大きなパラソルの下で読書をするのはロビン
俺はさっきサンジに「ロビンちゃんに運べ」と言われたアイスティーを手に彼女に近づく

ひんやり冷たいグラスを静かにテーブルに置くと、カランと氷とグラスが触れる音がした

邪魔をしてはいけないと思って、黙ってこの場を離れようと身体を起こすと
不意に本から視線を上げ、彼女はこちらを見た

「ありがとう」

「あ、あぁ」

にっこり微笑んで、それを手に取り一口飲むと
再び本に視線を戻した

踵を返し、戻ろうと思ったが
急に足が止まってしまう


…俺、暇じゃん


やるとこもない
話相手も今のところいない
それなのにどこに戻るというのか


「…」

行き場の無くなった俺は、
何となくロビンから少し離れたイスに音を立てないように腰をおろした


ゆっくりと、けれど確実に船は進んでいく
カモメが気持ちよさそうに空を飛んでいくのをただボーっと眺めた

いっそ寝てしまえば暇も潰れるのに

こういう時は、なかなかそうはいかないもんだ

テーブルに片肘をついて、掌にあごを乗せて支える
サンジお手製のアイスティーが目に留まった

美味そうだな
今度俺も作ってもらおう

そんなことを考えながら、欠伸をする
さっきより眠くなってきたが、寝るまで至らない


「暇を持て余してるようね」


ロビンが話しかけてきた
視線は本に向けたまま、けれど口元に笑みを浮かべている

「暇、以外の何者でもないな」

やることの無い人間はつまんないもんだなぁ、と俺が言うと
彼女はアイスティーのグラスを手に取り、そしてこちらを向いた

「あら、それってとても素晴らしいことだと思うけど」

「……そうかな」

どこら辺がいいのか、俺には解らなかった
得をするわけでもない、ましてや役にも立たない


「何にも捕われず、ただ時間が過ぎるのだけを感じられるなんて最高の贅沢よ?」


とニッコリ笑い、アイスティーを飲む
そしてグラスを元の位置に戻し、再び本の続きを読み始めた



暇が、最高の贅沢


さすがロビンだ
俺なんかとは考え方が違う

でも言われてみれば、暇は悪いことでは無いかもしれない
単純だが、彼女の言葉で俺の気分は一気に晴れた


俺の暇を贅沢だと言う彼女は今日も難しい本を読んでいる

今度、なにか面白い本を貸してくれと言ってみようか
他のクルーも楽しめるような本は無いかと、聞いてみようか



そんなことを考えながら、俺は静かに立ち上がった

とりあえず昼寝してる奴らが風邪を引く前に、何か掛けてやろう。




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