ふらりとやってくるあの人はまるで





CAT
-She likes him very much.-






はん、」

明るい声が降ってきて、ぼーっと窓の向こうを眺めていた私は顔をあげる

「土屋くん」

また、来た。



猫みたいな人


「今日も素敵な眼差しで何見つめとるん?」

悪戯っ子のような幼い笑みを浮かべて前の席に座るのは土屋君
同じクラスで、私とは対照的な人

バスケがすごく上手な彼は全国でもかなり有名で
人懐っこい性格は女の子にも人気で
よく「土屋君てカッコイイ」とか「面白い」とか言われているけど

私からすると、不思議な人

「いい天気だから、寝たら最高かなぁって思って」

外を見てたの、と言うと彼はふっと笑って「そーかぁ」と言った

薄い茶色の髪と少し細い目
見た目も猫のようだけど、性格も猫っぽい彼

数ヶ月前に大栄学園に転入してきた私は、関西では珍しい関東の人間で
初めは皆、興味本位で近寄ってきた
嫌ではなかったけど、なかなか慣れなくて、正直困ったこともある

そのうち、周囲の興味もおさまって一人で過ごす時間が出来た
ハブられているとかそういうのではなくて、ただ自然とこうなった

数人で何かをやるときは普通に笑いながら話しかけてくれるし、こうやって一人の時間も与えてくれる
そんなこのクラスがいつのまにか好きになっていた


土屋くんとまともに話をしたのは1ヶ月くらい前
あの日も今日みたいに天気がよくて、寝たいなぁと思って外を眺めていた


「いつも外見とるんやな」


優しい声だな、と思った
何となく彼の声やしゃべり方が心地よかった

あの日から、彼はふらりと私の元にやってくることが多くなった

時間はいつもバラバラ、休み時間だったり、昼休みだったり、放課後だったり
私の前の席や隣の席が空いているときはそこに座って
それ以外は机の周りに立って、柔らかな笑みを浮かべて声をかけてくる

初めはどう対応するべきなのかと迷ったけれど
今は普通に他愛ない会話をすることが出来る

はん見てたら、何や俺も眠たなってきたわ」

と目を伏せて言う彼は日向で昼寝をしている猫のよう
そんな土屋君を見ていて、最近は彼のさらさらな髪を撫でたくなる


「バスケ、どう?練習とか、大変?」

と尋ねると、土屋君は笑って返事をしてくれる

「まぁ大変っちゃ大変やけど、楽しいで」

バスケすんの好きやし、という彼の表情はとても幸せそうで
少し、羨ましい

はんとこーやって話すんのも楽しいわ」

そんなことを簡単に言えるのも、きっと土屋君だから
最初は軽い人かな、って思ったけれど
そうじゃなくて、きっと素直にそう言ってくれているんだろうなって思えるようになった

「ありがとう」

お礼を言うと、また笑う
よく笑う人だね
沢山笑えるってことは、とても素敵なことだよ

「ホンマやで。こーやって話しすんの好きや」

不思議な人だね
不思議なくらいに温かい人

「私も、土屋君の声聞いてると安心するな」
「ホンマに?」
「うん、何かすごく優しい声だよね」

子守唄とは違う、けれど心地よく耳に響く
ゆっくりと目を閉じても真っ暗な視界に浮かぶのは土屋くんの微笑み


「おおきに」


男の子だから低くて、でも優しい声
そんな彼の声が私は好きなんだ

そして彼自身も


BOY's side

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