それは11歳になった夏休みに届いた1通の手紙がきっかけだった

「…何これ」

鮮やかな緑色で書かれている宛名は“
自分だった

その手紙は彼女の人生を大きく変えるものとなる






Unfinished Heart






イギリスのキングズ・クロス駅に佇む一人の少女がいた
身体に対し随分と大きなカートの取っ手を握る少女の手は少し汗ばんでいた


「9と3/4番線てどこ?」

その小さな呟きに誰の返答もなく、プラットホームの9と10という数字の間に消えてしまう



今日は9月1日

は魔法学校へめでたく入学することになった
それを知ったのはつい数週間前に届いたあの手紙の文面からだ

全く知らないところからの手紙を不思議に思った彼女は、封を切らずに母親にそれを渡した
すると、母親はぱぁっと顔を綻ばせて明るい声で

「ああ、そうなのよ。、貴方は魔女よ」

と、悪戯っ子のような笑顔でそう彼女に告げたのだった



(なんでそういう大事なことを黙ってるのよ、それも11年間!)

驚きの後に現れた感情は腹立だしさ

自分の家系は魔法族であることを“隠していた”のなら、まだ分かる。
けれどあの母親の様子は、絶対に隠すなどという次元ではなかった
まさに、本当に“うっかり言い忘れた”という感じを醸し出していた


「しかも見送りもドタキャン、さらにはどうやって汽車を見つければいいのかさえ教えてくれないなんて…」

ダメな親を持つ子どもは大変だ!と心の中で盛大に叫ぶ
そして大きなため息をつき、手に握った切符を眺め、真上にある時計を見上げた

短針は11に近づいていて、長針はを9を通りすぎていた



「……このまま、乗れなかったらどうすればいいの…?」

急に不安が彼女を襲う
もしや初日から遅刻して怒られるとか…下手をしたら退学、いや入学もしていないのだから入学取り消しとか…
と、いろいろな最悪の出来ごとが彼女を頭をよぎった

「もうッ…どうすればいいのよー」

じわりと目に涙が溜まる
こんなことで泣くなんて馬鹿馬鹿しい、そう思っても焦りと苛立ちが彼女の涙腺を緩ませた



「君もホグワーツかい?」


不意に背後から声をかけられ、驚いたはびくりと肩を震わせた
そして恐る恐るゆっくりと首を捻って振り返る

そこには一人の少年が目を輝かせて立っていた
恐らくと同じくらいの年で、同じように大きなカートを手に握っていた

「“君も”って…じゃあ貴方も…?」

相手の様子を覗うように控えめに尋ねると、その少年は眼鏡の奥でにっこりと微笑んで言った
こくんと頷くとあちこちに飛んだ黒い髪が軽く揺れる

彼の笑顔をみて、はほっと息を漏らした
初対面で名前を知らない相手だったが、何より声をかけてくれたことに安心したのだ

「9と3/4番線がどこだか分からなくて…」

切符を見ながらそう言うと、少年はにこにこしながら答えた

「僕もホグワーツ特急にこれから乗るところなんだ。よかったら一緒に行かないかい?」

「いいの?」

「勿論さ!丁度学校までの道のりが独りでつまらないなぁと思っていたんだ。それに、」

女の子と楽しい時間を過ごしながらの旅路は最高だからね、と少年は軽くウィンクをした。
一瞬きょとんとしただったが、彼の明るく親切な様子に心を開き
有難う!と言い同行することを決めたのだった


「ああ、そう言えばまだお互いの名前もまだ知らないね。僕はジェームズ・ポッター」

「私はよ。宜しくね、えーっと…ジェームズ、君?」

「ジェームズって呼んでくれて構わないよ。僕もって呼んでいいかな?」

「勿論!」

友達が出来たことに、彼がいい人であることに喜びを感じたは嬉しそうに笑みを浮かべた
そんな彼女の表情に少年も嬉しそうに微笑む

「じゃあ、そろそろ行こうか、。急がないと乗り遅れるよ。」

「うん!」

こうして2人は9と10の間の壁を潜り抜け、鮮やかな紅に彩られたホグワーツ特急に乗り
期待を胸にホグワーツへと出発した


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