時計の短針が11を指し、真紅の車体をしたホグワーツ特急は汽笛を鳴らし動き出した

向かうは

――――――ホグワーツ魔法魔術学校――――――





Unfinished Heart






丁度真ん中より少し後ろの車両に乗り込んだ2人は、偶然にもすぐに空席のコンパメートを見つけ、そこに座ることにした
そして他愛ない話からお互いの情報交換が始まり、それは次第にヒートアップしていく


「それでね、『貴方は魔女なのよ、ホラ!言われてみれば今まで時々不思議なことが起こったこととかあったでしょう?』って言うのよ?
寧ろ急に魔法族だって言われたことの方が不思議だと思わない?」

「君の親御さんはとっても面白いね!素敵だよ」

自分が魔女であることをついこの半月前に知ったはその怒りをジェームズにぶちまけていた。
呆れて肩をすくめる彼女の反対側ではジェームズがお腹を抱えて笑っている


「面白いじゃ済まされないよ。おかげで私の人生がクルッと違う方向に向いちゃったんだもの」

予定では平凡ででも毎日充実した人生を送るつもりだったのに、と言いながらもは少し笑っっていた


「じゃあは、魔法についての知識は全く皆無ってこと?」

「ゼロではないけど、それに近いかも」

突然の質問に、はお手上げといった感じで両手を軽く挙げた
ジェームズは興味深そうに彼女をみつめる。

「マグルは知ってるかい?」

「ああ、それは知ってる。非魔法族の人たちでしょう?」

「そう。じゃあクィディッチは?」

聞き慣れない言葉に、は顔を顰めた
聞き返したくても、発音すらよくわからない

「何それ、凄い魔法使いの一族とか?」

「魔法界のスポーツだよ。とっても人気があるんだ」

その言葉を聞いて、魔法界にもスポーツがあるんだなとは心の中で思った
ジェームズの話によると、学校でその試合が行われるらしく、彼は少し興奮気味だった

「きっと君も夢中になるよ」

どんなスポーツかはわからなかったが
それでもはそんなに凄いのかな、ちょっと見てみたいなぁと少しだけわくわくしていた



話がひと段落したところで
ジェームズがコンパメートの向こう側の通路で車内販売が行われていることに気づいた

、お腹空いてないかい?」

するとは苦笑いを浮かべえて、実はちょっとだけ…と答えた

「グットタイミングだね」

そう言って、彼はちょっと待っててと言って扉を空け通路に出た
その様子を何だろう、と眺める
そして1分も経たないうちに、彼は戻ってきた
その両腕には何やらいろいろなものを抱えて

「ジェームズ、それは?」

「お菓子だよ。僕もお腹が減っていて、学校まで待てないし。一緒に食べよう、

ドサッと大量の箱やら袋やらを自分の隣の空席に置く
そしてひとつの包みをとって、の方へと差し出した
けれど、彼女は少し困ったような顔をしてジェームズを見上げる
その表情で彼女が何を言いたいのかわかったジェームズはにっこり笑った

「君に早く味を知ってほしいんだ。この摩訶不思議なまさに魔法であるお菓子の味をね」

は躊躇っていたが、彼の心遣いに感謝をすることにして、ゆっくり手を伸ばしお菓子を受け取った

「ありがとう」

感謝の言葉を述べると、ジェームズは早く食べて、きっと気に入るよ!と言いながら自分もお菓子手をつけた





「“Chocolate Frogs”…蛙?ジェームズ、これ何?」

手の平サイズの多角形の箱を手にとったはジェームズに尋ねる
既にいろんなお菓子に手をつけている彼は、質問に答えようと急いで口の中のものを噛み砕き飲み込んだ。
あまりに急に飲み込んだので、苦しそうに胸を拳で軽く叩きながら彼女の手にある箱を見る

「ゴホッ…ああ、それはその名の通り蛙チョコさ」

「…まさか、蛙が入ってるの…?」

急にの顔が曇り、ジェームズは苦笑しながらそれを否定した

「蛙の形をしていて、動くんだよ。ただのチョコレートさ」

「…そう…」

ほっとして、それなら食べてみようかなと思った彼女だったが
(…でも形は蛙で、動くって…あんまり食べたくないかも…)
と思い、封を切らずにそっともとの場所へと箱を戻した

「…これは?バッティー、ボッツの…」

「百味ビーンズ」

すかさずジェームズの言葉が彼女の後に続く
は百味って、どんな味があるの?と尋ねた
するとジェームズはにやりと笑って言う

「いろんな味があるのさ。まさに“百”だ。当たりも外れも大当たりも、試しに食べてみれば?」

「うん…」

何味が出るのかわからないので不安を感じながらもどきどきして箱の中に指を伸ばす
一粒だけ取り出してみると綺麗な緑色をしていた
その粒を目の前に持っていき、じーっと見つめる

「これ、何味かなぁ」

「んー、メロンかグリーンアップルか…もしくはほうれん草とかかな」

「ふーん…よし、」

思い切ってその粒を口の中に放り込んでそっと噛む

「何の味だい?」

「…なんか青臭いような…でもあんまり味しない…」

顔を顰めていうに、ジェームズは笑いながらあぁそれはきっとキャベツ味だよ、と言った

その後トースト味、オレンジ味、臓物味など様々な色、様々な味には喜んだり顔を顰めたりと百面相をした。
そしてジェームズが掴んだ茶色の粒を見て、これは耳くそ味かもしれない、と呟くと
はそんな味もあるの!?と驚いた。
けれどただのメープル味で彼はほっと胸を撫で下ろし、
一方彼女はその後ビーンズを口に入れる前に、軽く匂いを確認をしてから食べるようになった


それから数十分でほとんどのお菓子を食べつくした2人は、満腹感に浸りながらまたおしゃべりを始めた
何気なくジェームズがコンパメートの外を見ると、既に制服に着替えた数人の生徒が前を通り過ぎた

「僕たちもそろそろ着替えたほうがいいかもね」

その案に素直には頷く
ジェームズはすっと立ち上がり自分の荷物をもって外に出ようとした

「ジェームズ、何処行くの?」

不思議に思ったが首を傾げて尋ねると、彼は驚いたように目を見開きそして苦笑いを浮かべる

、男の僕が女の子と同じ場所で着替えるわけにはいかないだろう?」

「あ…そうね」

全く何も考えていなかった自分の発言に少し恥ずかしさを覚え、の頬はほんのり色づいた

「僕はどこか場所を見つけて着替えてくるから、君はここを使って。着替えが終わったらドアを開けておいてくれると助かるな」

「うん、わかった」

こくん、と頷いて返事をした彼女を見て、ジェームズは軽く手を振って通路へと出た

残されたは荷物から新品の制服を取りだして一度回りをきょろきょろと見回す
そして再び制服を見た

「……なんか、ちょっと緊張するなぁ」

小さな呟きは狭いコンパメートの中にだけ響いた




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