ジェームズとピーターがシリウス、リーマスを
そしてリリーがを探して中庭にやってきたとき
その2人は向き合ったまま下を向いて立ちすくんでいた
そこには居るはずのリーマスの姿が無く、2人に問いかけるがどちらも答えようとしなかった
喧嘩でもしたのか、と聞いても2人は頷きもしない
その晩、夕食に向かうときからずっとリーマスの姿は無かった
心配に思ったジェームズたちは寮の談話室から抜け出しマクゴナガル先生のところに向かった
そして先生にリーマスの不在を尋ねたが、その返答は彼等に大きな衝撃を与えた
リーマスは医務室に運ばれた…と
Unfinished Heart
「……」
「…はぁ…」
「……」
「……」
「……」
「…はぁ〜…暗いなぁ」
重苦しい沈黙を耐え切れなくなったジェームズがそれを破った
大広間で皆で宿題をやったり本を読んだりしていた5人だが、誰一人としていつもの雰囲気の者は居なかった
「暗いって貴方…この状況がわかってるの?ジェームズ」
彼の言葉をあまり快く受け取れなかったリリーが不機嫌そうに言った
ジェームズは苦笑し、言い方が悪かったかな、と心の中で呟く
「ああ、ごめん。でも、ちょっと僕には耐えられなくて」
「…もぅ」
呆れたリリーが肩をおとすが、実は彼女もこの空気に息苦しさを感じていた
そしてそれはジェームズの隣に座っていたピーターも一緒だった
「リーマス、…どうしたのかな」
「…そうね」
ピーターの不安の入り混じった声にリリーも心配そうに答える
ジェームズもいろいろと考えてみるが、何も思いつかなかった
ただひとつの疑問がどうも引っかかって仕方がない
ジェームズはため息混じりに呟いた
「だいたい、どうして面会謝絶なんだ?」
そこにいた全員が同じ疑問を抱いていた
昨晩、リーマスが倒れ医務室に運ばれたと先生から伝えられ、彼らはすぐに面会を希望した
しかしマクゴナガル先生は時間的にもリーマスの体調的にもその晩の面会を許可しなかった
不満を抱えたまま朝を向かえ、朝一でリリーとジェームズが代表して医務室に向かった
ところがちょうど医務室から出てきたマダム・ポンフリーにリーマスに会いたいと懇願したが、
「今は面会謝絶です」
と厳しく禁じられてしまったのだ
何度頼んでも聞き入れてもらえず、仕方なく2人は引き返したのだった
「具合を聞いても、なぜ倒れたのかと尋ねても『ただの体調です。』の一言だけ。
“ただの”体調不良なのに、何故面会できないんだ?」
腕組をして不満を漏らすジェームズに、リリーも不機嫌そうに頷いた
落ち着かない様子でそわそわするピーターの隣と正面では、とシリウスが固く口を閉じていた
この2人の様子にピーターはわからないが、ジェームズとリリーはすぐに何かを察知していた
昨日最後にリーマスと会ったのはシリウスとだったが、2人はそのときのことを誰にも話さないでいた
何度かジェームズとリリーがそっと尋ねたが、それも意味を成さなかった
何を聞いても2人は口を割らないのだ
「、」
「え、あ…何?リリー」
どうして何も話してくれないの?、そう言いたいのは山々だ
けれども彼女は「いいえ、やっぱり何でもないわ」と笑みを浮かべてその思いを飲み込んだ
聞きたいけれど、聞けない
目に見えない、踏み込めない領域のようなものを感じていたのだ
それは、ジェームズがシリウスに対して感じているものとも同じ
ジェームズとリリーは親友に、微かな寂しさを感じてた
親友に何を聞かれても黙秘するシリウスとはどちらもずっと同じことを考えていた
シリウスは眉間にしわを寄せて一見不機嫌そうに
は今にも泣き出しそうなほど悲しい表情で
昨日のことをずっと考える2人だが、ただ彷徨うばかりで行き着かず
誰かに打ち明けることすら躊躇っている
結局そのまま一日が幕を閉じようとしても2人は黙ったまだだった
深夜
自室のベッドで横になっていたは中々寝付くことが出来ず呆然と窓の外を見ていた
真っ暗な空を煌々と照らす満月
「…眠れないなぁ…」
ぽつりと呟いて、彼女は身体を起こした
しばし月を見つめた後、は隣のベッドで眠っているリリーを見た
今日、何度リリーが声をかけてくれたのだろう…なのに、全てそれを軽く流してしまったのだ
罪悪感は決して無くはなかった
それでも、どうしても言いにくいことであったし、第一何と話せばいいのかわからずにいた
「…ココアでも飲んだら、眠れるかな」
小さな声に返答を返すものはいない
は忍び足で部屋を後にした
静かに階段を下りて、談話室に入る
薄暗い部屋の中で暖炉だけがいつも通り燃え上がっている
ふと、暖炉前の大きなソファーに誰かいることに気づく
は一瞬大きな不安に襲われたが、すぐにそれは消えていった
「ん、?」
「…シリウス」
そこに居るのがシリウスだとわかり、彼女はほっと安堵の表情を見せた
暖炉の火がパキッ音を立てて薪を燃やす
ココアを持ったは隣に座っていいかと尋ねる
シリウスは「あぁ」と返事をして自分の身体を端に寄せた
一人分座れる程の距離を置いて2人は腰を下ろした
「…眠れないのか?」
不意にシリウスが静かに尋ねた
両手でカップを持ったは小さく頷く
「うん…何だか、気になっちゃって…」
「俺も、…眠れない」
微かに苦笑を交えて、シリウスがそう言った
「どうもアイツのことが気がかりなんだ」
「うん」
アイツ、それはリーマスのことだとすぐにわかった
シリウスがわざとリーマスの名前を口にしなかったのは、彼女が自分と同じ理由で眠れないとわかっていたからだ
「リーマス、どうしたんだろうね…」
「…何かあるとしか、思えないよな」
ふと、シリウスの横顔が真剣なものになりは静かに首を縦にふる
「心配だね…」
膝に置いたココアを見つめながら小さな声で囁く
「アイツは、人の心配はするクセに…自分は心配かけまいとする変なとこあるからな」
呆れたような口調で、けれど寂しげにシリウスが言った
「…リーマスは、…優しいから」
「…アイツは、優しすぎるんだ」
それから数分、2人の間に会話は無くなった
シリウスもも、ただぼんやりと暖炉の火を見つめていた
2人の考えていることは同じ、リーマスに何があったのかということだ
ふと、がぽつりと呟いた
「どうして、面会出来ないのかなぁ…」
それは話しかけているというよりも独り言のようなものだったけれど
シリウスは彼女の言葉に耳を傾ける
彼もと同意見だった
「確かにな」
「…せめて顔を見るくらい、いいのに」
その言葉にシリウスはぼんやりと考える
教師陣がああやって断固として面会を許可しないのは、おかしい
何かあるのではないか、あるいは何か隠しているのではないか
疑うようだが、それが一番考えられることだと彼は思う
「、」
シリウスの呼びかけに、は振り向く
肘掛に肘をついて手の上に顎を乗せたままシリウスはを見た
そしてある提案を持ちかける
「医務室に、行ってみるか?」
「…え?」
は首をかしげる
シリウスの言葉の意図が掴めない
医務室になら何度も行った、けれどマダム・ポンフリーが恐い顔で自分たちを追い返して終わってしまった
それをまたやるということだろうか、と彼女は考える
意図がいまいち掴めていない彼女の表情を見て、シリウスはにやりと笑う
「ただ行くんじゃない。医務室に忍び込むんだ」
言い考えだろ?と笑う彼には目を丸くする
本当なら忍び込むなんて!と大きな声を出しそうなところだったが
驚きすぎてそれさえも出来ない
「し、忍び込むって…」
「そうでもしなきゃ、リーマスには会えない。だってリーマスのこと心配だろ?」
「そうだけど、…でも見つかったら…」
見つからない保証なんて無い、それどころか管理人のフィルチが学校中を歩いているだろうし、見つかったらどんな罰を与えられるか…そう考えるとやはり行動し難いものがある
「見つかったら、大変なことになるよ…」
「ああ、姿を見られたらな」
目を輝かして、シリウスは不敵に笑った
「でも、ひとつだけ絶対に見つからない方法がある」
「見つからない、方法…?」
彼の言うその方法がどんなものか、には全く想像出来ない
けれどこんなにも自信満々に言うのだ、きっとすごい手段なのだろう
シリウスはソファーから立ち上がり、男子寮への階段の方を向いた
「、着替えて、杖とか必要なものを持って、5分後にここに集合だ」
「ほ、本当に行くの!?」
実は冗談なのではないかと思っていたは驚いて少々大きな声を出した
シリウスはにやっと笑う
「リーマスに、会いに行こう」
そう言い残して、彼は階段を上っていった
談話室に残されたは飲み干したココアのカップを持ってゆっくりと立ち上がる
「これで、もし見つかったら笑えないよシリウス…」
ため息混じりにそう呟いて、彼女も階段を上り自室へと向かった
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