「なぁ、リーマス」
「ん、何だい?」
「少し、…話があるんだけど」
「…」
風が心地よい午後だった
Unfinished Heart
その日のシリウス・ブラックの表情は、固いものだった
午後の授業も終わり、天気がいいので彼等は4人で外に出た
女の子2人は宿題に早く取り掛かろうと図書室へ、その方がありがたいとシリウスは内心思う
さらにはジェームズがピーターを連れてスニッチを盗りに行った
幸か不幸か
中庭の噴水の縁に腰掛けるのはリーマスとシリウスだけだった
長い脚を組んで秋になりつつある景色を眺めているシリウスと分厚い本を膝において読書をしているリーマス
その2人の間には一人半座れる程度のスペースが空いていた
青い空を流れる雲を眺めながらシリウスはぼんやりと考え事をする
そして、今朝のの言葉を思い出した
ちらりと横目で隣にいるリーマスを見る
そしてあまり元気の無い、彼の顔に視線が行き、シリウスは重たい口を開いた
「なぁ、リーマス」
「ん、何だい?」
声をかけられ、視線を本から離しリーマスはシリウスを見る
その表情は穏やかであるが、健康的な顔色では無いなとシリウスは思う
そして、静かに言った
「少し、…話があるんだけど」
「…」
シリウスの真剣な表情に、リーマスにもふと笑みが消える
さんさんと輝く太陽が、流れる雲に隠れ辺りが少し暗くなった
「…何があった」
「…え?」
何だい?と聞き返すリーマスにシリウスは真剣な表情で本題に入っていった
「最近、何だか元気ないだろ」
「…そうかな」
ふと、リーマスは笑みを浮かべる
けれどそれは本来の彼の優しい暖かな笑みとはかけ離れたものだった
「ごまかすなよ」
鋭い言葉と眼差しがリーマスを射る
シリウスは真剣だった
彼も同様、リーマスのことが気がかりだった
だからに相談を受けたとき、すぐにリーマスと話し合おうと決めたのだ
「顔色も悪い、それも理由の一つだがあくまでも身体的なことだ。 最近のお前は、とにかく元気が無いし、それに…」
どこかで一線引いているような気がしてならねぇ。と、シリウスは包み隠さずありのままのことを述べる
リーマスはただ無表情のままそれを聞いていた
「何かあるんなら、話せよ」
「…何も、無いよ」
「うそつくな!」
白を切り感情を隠すリーマスに対しシリウスは感情を剥き出しにする
シリウスはリーマスを見るが、彼はシリウスを見ようともしなかった
「…隠すな」
「隠して、ないよ」
「嘘をつくな!一人で抱え込むなよ!」
「君に何がわかるッ!!」
シリウスは驚き目を見開いた
リーマスが、あのリーマスが悲痛の表情で大声をあげたのだ
それは、全く知らない友人の姿だった
「リーマス…」
「…ごめん、シリウス…今はまだ、上手く説明できないんだ」
「……」
弱弱しい声でリーマスはぽつりと呟いた
本の上に置いた手が微かに震えているのにシリウスは気がつく
「少し、…放っておいてもらえないかな」
「…」
「もう少しだけ、…時間が欲しいんだ」
そう言うと、リーマスは立ち上がった
その立ち上がる姿ですら弱弱しく今にも倒れるのではないかとシリウスは思った
「リーマス…」
「…ごめん、シリウス」
本を脇に抱えて、リーマスはゆっくりと歩き出した
寮の方へと不安定な足取りで進んでいく
「リーマス…」
彼の目の前に、一人の少女が立ちはだかる
「……」
が心配そうな眼差しでリーマスを見たが、リーマスは視線を合わせようとしなかった
それがどんなに彼女を傷つけることか、彼にはわかっていた
わかっていたけれど、どうしても出来なかった
「…リ…」
「ごめん、…」
再びが呼びかけようとしたときには、彼は下を向いて彼女の脇を通り抜けていった
消えそうな程小さな、謝罪を残して 彼は立ち去った
「……」
噴水の縁から静かに立ち上がったシリウスはゆっくりとに歩み寄った
そして俯いて悲しげな表情をしている彼女に何と声をかければよいのかと考えた
けれど、何も思いつかず、ただ見ていることしか出来なかった
ザアァァァッと、秋の肌寒い風が2人を包み込む
それからジェームズたちが戻ってくるまで、2人は長いことそこに立ちすくんでいた
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