夏休みに突入してから大分日が経ったある夜のこと
Unfinished Heart
夜風の涼しい夜だった
部屋の窓を開け、机に向かって宿題をやっていたときだった
シュッと風を切る音がして、ふと顔をあげて窓を見ると
一羽のふくろうが窓の縁に止まり、の方を向いて首を傾けた
嘴に郵便物を持って
「、お帰り」
は羽ペンを置き立ちあがって窓の方へ近づく
そして咥えていた手紙を受け取りる
「疲れたでしょ?ホラ、お休み」
腕を差し出すとはその上に素早く身を乗せる
そのまま鳥篭に連れて行く
ホー、と鳴きながらは餌を数回つつくとそのまま首を竦めて目を閉じた
はその様子を見届け、音を立てないように静かにベッドに腰掛けた
手に持った郵便物を大事そうに手に持ち、微笑む
そして誕生日プレゼントの包みを開けるときのようにわくわくしながら封を切る
「ジェームズからだ」
男子特有の少々雑な字で書かれた文面を読んで、思わず笑みが零れる
内容はさすがジェームズ、といった感じで
すでに宿題を全て制覇し、やることがなくて退屈しているようだ
文面の後半は来年の悪戯計画のようなもので、きっとリリーが聞いたら怒鳴りつけることだろう
読み終わるとそっと封筒に戻し、脇に置く
そして次の手紙を手に取った
「今度はリーマスね」
ジェームズより少し達筆な筆跡の手紙を読む
リーマスはジェームズと違って宿題の話と日常の話、悪戯の内容など全く書かれていなかった
真面目で丁寧なリーマスの手紙も大事に封筒にしまった
そして最後の郵便物を手をとる
「…ポストカード?」
紺色の背景にきらきらと輝く満天の星の写真
魔法界の写真はマグルのものとは違って動く、ということを丁度一年前に知った彼女には
それはまだまだ物珍しい代物
まるで写真の中に自分がいるような感覚には感嘆の声をあげる
「きれーい…」
微かに変化する紺色のグラデーション、その上に散りばめられた無数の星
なんてロマンチックな写真だろう、そう思いながら差出人を確認するべくカードを裏返す
そして、その差出人の名には驚きを隠せなかった
FROM SRIUS.B
真っ黒のインクで流れるように殴り書きされた文字は、確かにそう書かれている
カードの半分はメッセージを書く欄になっていて
ただ2行だけ、彼女へのメッセージが書かれていた
“マグルの写真は動かないんだよな”
“長期休暇は退屈だ”
「…シリウスらしいメッセージね」
思わず笑ってしまう
魔法族の家庭で育った彼は、恐らくマグル界の写真というのもを見たことが無いのだろう
そして退屈という言葉、きっと思ったことを有のままに記したのだろう
「これは、“早く学校に戻りたい”っていう意味で解釈してもいいのかな?」
は頬を緩ませる
友達に会いたいとも、学校へ戻りたいとも書かれていない
けれど宿題をとっくに済ませ一日でも早くホグワーツでの生活を送りたいという彼の様子は
手に取るように想像することができた
再びカードを裏返し写真を眺める
キラリキラリと瞬く星、時折姿を現す流れ星
「早く、夏休みが明けないかな」
そう呟きながら友人たちの手紙を大事に手に取る
それらを胸に抱き、勢いよくベッドに倒れこむ
夏休みも残り半分程度
まもなく、あの真っ赤な汽車に乗り
友人たちとの楽しい日々が待っている
「早く宿題終わらせて、手紙の返事を出さなきゃ!」
少女の明るい声が部屋中に響き渡る
今宵の空は
ポストカードの写真そのままの夜空だった
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