「…、…!」
「ん、なぁにもー…」
「なにじゃないわよ、今日から新学期でしょう?何時だと思ってるの!」
「…ぇえ?!」


9/1 今日からホグワーツ2年生です






Unfinished Heart






「全く、あんなに“早く学校行きたい”って言ってたのに寝坊するなんて」
「だって、わくわくしたら昨日寝れなくて…」

母親の運転する車の助席ではバツの悪そうな顔をした


今日から新学期だ
待ちに待った学校が始まる日
しかし、興奮してなかなか寝付けなかったは見事に寝坊してしまったのだ

「全く、困った子ねぇ」
「…」

母にそう言われ、は頬を膨らませて黙り込む
確かに悪いのは自分だ、しかし母親にそれを言われるのは何とも言えぬ屈辱

今朝だって、自分は鞄丸ごとリビングに忘れてきたくせに…
そう言ってやろうかどうしようかと考えていると、車のスピードが落ちる

「はい、着いたわよー」

キングズ・クロス駅
いつも通り、人の多い駅の前で車が止まる

急いで車を降り、トランクから荷物ケースと鳥篭を出す
母親が近くから持ってきたカートにそれらを乗せ、一瞬籠の中のの様子を覗き込む
羽の間に首を竦ませて、どうやら眠っているようだ

「ちゃんと勉強して、そして楽しんできなさい」

そう言って母は屈んで少女の頬にキスをした
もにっこり微笑み、少し背伸びをして母にキスを返す

「いってきます!」
「気をつけてね。今10:56よ、急ぎなさい」
「は、早く言ってよ!!」

そういう大事なことは、と叫びながら
大きなカートを押しては走り出した

「あ、でも私の時計3分早いんだっけ」

そんな母親の呟きは娘には届かず




道行く人の間を必死にカートを押し、は9番線と10番線の間までやってきた
ふと近くの時計を見上げると

「…56分…?」

立ち止まり後ろを振り向いて遠くの時計を見ると
11:56…

「…またお母さんに騙された…」

とため息をつきながら
は固いレンガで出来た柱を一瞬にしてすり抜ける


奇妙な感覚も、数度目となると意外と慣れてくるもの
9と3/4番線のホームに出たは目の前の真っ赤な車体の汽車を見て笑みを零す

「皆元気かなぁ」

近くにいるかな、と辺りを見回す
しかし人が多く、探すのは困難だ

「汽車の中で、会えるよね」

そう言って彼女は乗り遅れまいと前の方の車両に乗り込んだ


空いているコンパメートを探そうと辺りをきょろきょろと見回す
しかしどこも他の生徒が居て、なかなか見つからない


?」


ふと背後から呼ばれ、は後ろを振り返る

「シリウス!」

背の高い黒髪の少年を見て、彼女は顔を綻ばせる
シリウスも少し微笑んで、彼女に歩み寄った

「久しぶりだな」
「うん。あ、素敵なポストカードありがとう!」
「ああ、あれか。悪いな、折角手紙くれたのに。」

ああいうの書くの苦手なんだ、とシリウスは言う
は彼らしい、苦笑を浮かべた

「あ…シリウス、空いてるコンパメート見つかった?どこも空いてなくて」
「ああ、リーマスと一緒なんだ。来いよ」

シリウスは自分の背後を親指で指す
はほっと安心して、お礼を言った

「ありがとう」
「…あぁ」

シリウスは少し照れくさそうに言って、コンパメートまで案内してくれた


揺れる汽車の中をシリウスと歩く
そして彼が足を止めたところで同じくも立ち止まる

扉を開けると、窓の外を見ていたリーマスが顔を2人に向けた

!」
「リーマス、久しぶりね!」

にっこり笑って側によると、リーマスも嬉しそうな表情をする
シリウスがリーマスの隣に腰掛け、は向かい側の席に座った

「手紙ありがとう」

「こちらこそ、夏休みはどうだった?」

和気藹々とする雰囲気の中3人で長期休暇の話を始めた
宿題が大変だったとか、退屈だったとか他愛ない会話で笑い合う
も友人たちに再会出来たことを嬉しく思い、自然と顔が綻んだ

「リリーやジェームズやピーターは?」
「前の方の車両は見たけど、見当たらなかったな。多分後ろの方の車両に乗ってるんだろ」
「そっか、早く皆に会いたいね」
「うん」

窓の外を眺めながら、3人は2年目のホグワーツに期待を膨らませる
あと数十分後、彼等は再びもうひとつの我が家へと到着するだろう


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