寒い季節となり、雪が降るのが当たり前になってきた頃
ホグワーツにクリスマスの時期がやってきた





Unfinished Heart





「え!?」

グリフィンドール寮の談話室にの素っ頓狂な声が響いた

パチパチと薪を鳴らし、オレンジ色の炎がゆらゆらと揺らめいている暖炉
その前でリリーと一緒に寛いでいた彼女は、不意に友人から聞いた言葉に驚いて声をあげた


「皆明日帰っちゃうの?」

「皆じゃないわ、私とジェームズとリーマスだけ。シリウスとピーターは残るそうよ。貴方は?」

「私は、帰らないって親にふくろう便出しちゃったし」

は沈んだ声でそう言った


クリスマス間近となり、休暇がやってきた
は折角なので学校に残って友人とクリスマスを過ごそうと考えていた

ところがしリリーもジェームズもリーマスも、休暇は家で過ごすというのだ
これには彼女もショックを隠せなかった

「ごめんなさい、…」

申し訳なさそうにリリーが謝ってきたので、は慌てて違うの!別にリリーは悪くないよ!と言った

「大丈夫、ちょっと寂しいなって思っただけだから」

気にしないで家族とのクリスマスを楽しんできてね、と力なく笑うととリリーもえぇ、と微笑んだ

もう寝ましょうか、とリリーが切り出したので2人はベッドに身を沈めた
お互いにおやすみ、と言い明かりを消す


暗くなった部屋ではひとり悩んでいた
隣からリリーの寝息が微かに聞こえてくる

(…皆帰るのかぁ…)

小さなため息をつく
彼女が気にしているのは友人とクリスマスを過ごせない、ということだけではなかった
寂しいと思うけれど、それは仕方ないことだと分かっている

悩みの基は、学校に残るメンバーだ

ピーターはいい
初めて会った時は怯えていた彼だが、時間が過ぎるにつれ、普通に接することが出来るようになった
時々一緒に宿題をやったりもするくらいに2人は友好的だ

問題は、シリウス

出会ってから随分と時間が経つが、なんとも微妙な関係の2人
いつも6人でいるので、当たり前のように彼とも一緒に過ごすのだが
ジェームズやリーマスのように友好的な関係ではない
さらには最近彼は自分のことを嫌っているのでは…と思うようにまでなってしまった

(シリウスが笑ってくれたことって、一度もないよねぇ)

真っ暗な部屋の僅かに見える天井を眺めながら彼の表情を思い出す

初めて会ったときのように、寝起きが悪いとき以外はとくに不機嫌そうな顔をされることはない
ただ、笑った顔ではない
いつも無表情という感じの彼の態度

もともとクールな性格だから女子に対しやたらと笑顔を向けるタイプでは無い
しかし…

(リリーには、もっと喜怒哀楽を見せてるような気がするだよなぁ)

笑顔ではないけれど、
悪戯を注意されたりすると反発したり、面倒くさそうな顔をしたり、ある程度の表情はリリーには見せていた
しかしが彼のそういう表情を見るのは、いつも傍観者としてだけ
彼女自身に対して、言ってしまえばシリウスは表情が無い

「んー…」

寝返りを打って、瞼を閉じる
明日から始まるシリウスとピーターと自分だけのクリスマスを思い浮かべた


(…上手くやっていけるかなぁ…)

帰宅をするリリー、ジェームズ、リーマスに
3人でのクリスマスは心配だから、帰らないで!などということ、言えるわけがない


けれど、超えるのは難しい壁だ


「明日起きるの、嫌になってきた…」


彼女の呟きは、気持ちよさそうに眠っているリリーには届かなかった


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