自室に戻ったシリウスは背中から自分のベッドに倒れこみ、

そしてため息をついた


「バカか…」


ため息交じりに呟いたその言葉は彼の耳にしか届かない
片手を頭の後ろに、もう片方の手では自分の顔を覆う


さっきのの顔が、頭から離れない


折角チェスに誘ってくれたのに
折角話をする機会を掴めそうだったのに
折角彼女との溝が埋まりそうだったのに


「何で断ったんだ…俺」


自分は断ってしまった。
しかもぶっきらぼうに…
その直後に彼女が見せた表情が焼き付いて離れない

視界を塞いでいた手をゆっくりと持ち上げ、そして力が抜けたように一瞬でそれを下ろす


「あー……」

どうしてこんなにも彼女と上手く行かないのだろう、
そんな思いがシリウスの頭の中に浮かぶ

(思えば、入学してからずっとこんな感じかもしれない…)

天井を見上げながら呆然とする
大きなため息をひとつついて、ゆっくりと瞼を下ろした






Unfinished Heart






先ほどまでチェスで遊んでいたピーターと
今は暖炉の前にテーブルを移動させ宿題をやっていた

広げられたの羊皮紙には綺麗な字がスラスラと並べられている
一方ピーターは数行しか書いておらず、必死に本に顔をつけていた

半分くらい終わったところでは手を休める
そして男子部屋へと伸びる階段を見つめた

無意識のうちに、ため息をつく


「…」


そのため息を耳にしたピーターは視線だけ動かしてを見た
その寂しそうな表情に彼も無意識に声をかけてしまう


とシリウスって、仲悪いの?」

「!」


驚いた彼女は目を見開いて彼を見つめる
視線に射抜かれたピーターは余計なことを口走ってしまったと思い慌てて口を開く


「あ、あの!深い意味はなくてッ…!その…な、なんていうのかな…
なんとなく…あんまり…話とか、しないし…」


ピーターは縮こまって冷や汗を流している
気まずい…そう思った彼だが、やはり彼女の反応が気になった
ゆっくりと、顔を起こす


「…」

「…」

「…」


「…はぁ…やっぱり、そうなのかな…」


はがっくりとうな垂れた
一瞬驚いたピーターだったが、彼女が怒った様子もなかったのでほっと息をついた
これ以上は地雷を踏みたくない、そう思った彼だったが
知りたいという欲には勝てず、控えめにだがさらに話しかけていく


「“そうなのかな”って、…なんだか曖昧な感じなんだね」

「うん…私にもよくわからないの」


手に持った羽ペンをくるくると弄ぶ
真っ白な羽がふわり、ふわりと踊る


「仲良くなりたいんだけど、上手くいかないっていうのかな…」


嫌われてるのかも、私…と彼女は苦笑を浮かべる
その言葉を聞いて咄嗟にピーターが叫ぶ


「そんなことないよ!を嫌いになる人なんて、いないよ!」


テーブルに両手をついて身を乗り出し、彼はいつもとは違う雰囲気で強めな口調でそう言い放った
は目をぱちくりさせる
こんなピーターは初めてみたのだ

大声で叫んだせいか、少しばかり息の上がっていた彼は
自分が叫んだことを自覚し、急に風船が萎むようにみるみる小さくなっていった


「…あ、…あの…スリザリンとかは分からないけど、…でも、
ぐ、グリフィンドールには…君の事を嫌う人間なんかいないよ…ッ
それに…」


シリウスは、…理由も無く人を嫌ったりする人じゃないと思う…


尻すぼみな言葉
小さくて聞き取るには困難な言葉だったが、にはしっかりと聞こえていた

彼女はその言葉がとても嬉しくて、笑顔になった
自分は、なんていい友達に恵まれたのだろうと幸せを感じる


「ありがとうピーター」

「あ、…うん」


目の前の友人は真っ赤になって頷く
そして照れくさそうに、はにかんだ


明日はクリスマス

思い切って、自分から踏み出してみようか

楽しい休暇になることを祈って


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